- 情報商材もクーリングオフできるケースがある
- クーリングオフができる期間はケースによって異なる
- クーリングオフをするなら内容証明郵便の送付が望ましい
- 情報商材詐欺にあった場合はクーリングオフ以外にも返金方法がある
近頃では、インターネット上で情報商材というものが数多く販売されています。
効率よくお金儲けをしたい、あるいは何らかの悩みを解消したい、といった目的で多くの方が情報商材を購入していますが、期待していたような内容ではなかったということがよくあります。中には、あまり価値のない情報商材を言葉巧みに高額で売りつけるような詐欺の手口も少なくありません。
せっかくお金を出して情報商材を購入したのに目的を果たせなければ、クーリングオフをするなどして返金してほしいと考えることに無理はありません。
この記事では、情報商材をクーリングオフして返金を受けることができるのか、できるとして、いつまでに、どのような手続きをとればよいのかについて、わかりやすく解説します。
情報商材とは
情報商材とは、何らかの目的を達成するためのノウハウを商品化した有料情報のことです。
副業や投資で効率よくお金を儲ける方法を解説したものが多いですが、他にも、ギャンブル必勝法、恋愛や結婚相手を見つけるコツ、外見や性格上のコンプレックスを解消する方法を解説したものなど、多種多様なジャンルの情報商材があります。昨今では、人の悩みがあるところには情報商材があるといっても過言ではありません。
そんな情報がどのような形で売られているのかというと、大きく分けて次の3つのパターンがあります。
販売の形式 | 特徴 |
---|---|
ダウンロード版 | 情報がPDF、動画、音声などの形にまとめられており、代金を支払えばすぐにパソコンやスマホでダウンロードし、閲覧、視聴ができる |
DVD版 | 代金を支払えば、PDF、動画、音声などを収録したDVDが送られてくる |
冊子版 | 書籍と同じように情報が紙に印刷されていて、代金を支払えば、情報が記載された冊子が送られてくる |
最近では、パソコンや高機能なスマホが普及していることもあり、ダウンロード版のみの情報商材が増えてきています。しかし、並行してDVD版や冊子版も利用できる情報商材もあります。
クーリングオフとは
情報商材を購入した契約をクーリングオフできるかどうかを考える前に、クーリングオフとはどのような制度であるのかを確認しておきましょう。
クーリングオフとは、特定の契約類型においては、売買契約が成立した後でも、一定期間は買主から無条件で契約を解除できる制度のことです。
法律上の原則としては、いったん契約が成立すると一方的に解除することはできなくなります。契約が成立する前でも、申込みをした後は、勝手に申込みを撤回することは許されません。
しかし、契約類型によっては、消費者が冷静に検討する間もなく申込みや契約をしてしまうこともあります。このような場合に、消費者保護の観点から申込みの撤回や契約の解除を特別に認める制度が、クーリングオフです。
クーリングオフが認められる契約類型として、特定商取引に関する法律(以下では「特商法」と略します。)で以下のものが定められています。
- 訪問販売
- 通信販売
- 電話勧誘販売
- 連鎖販売取引
- 特定継続的役務提供
- 業務提供誘引販売取引
情報商材でクーリングオフができるケースは少ない
ここで結論をいいますと、情報商材でクーリングオフができるケースは少ないのが実情です。
その理由は、情報商材の販売では、ほとんどのケースが「通信販売」に該当するからです。通信販売にもクーリングオフは適用されますが、他の契約類型と比べて適用条件が厳しくなっており、多くの場合はその条件を満たしません。
DVD版と冊子版の販売では他の契約類型に該当するケースもあり得ますが、その数は決して多くありません。
とはいえ、情報商材でもクーリングオフができるケースは存在しますので、それぞれのケースにおける適用条件などを以下で解説していきます。
ダウンロード版の情報商材でクーリングオフができるケース
ダウンロード版の情報商材でクーリングオフができるのは、販売業者の広告等に返品特約に関する記載がない場合です。
インターネット上で情報商材を購入し、ダウンロードする契約は「通信販売」に該当します。そして、インターネットを介する通信販売では、販売業者は広告の他、販売ページや申込みページにも返品特約に関する事項を表示しなければならないとされています。
返品特約とは、申込みの撤回や契約の解除に関する条件や方法のことですが、返品を受け付けないのであれば「返品不可」である旨が表示されていなければなりません。
これらの表示がなかった場合は、情報商材をダウンロードした後でもクーリングオフが可能です。
とはいえ、合法な業者の多くは特商法の表示を正しく行っていますので、実際にはクーリングオフができるケースは多くありません。
DVD版や冊子版の情報商材でクーリングオフができるケース
DVD版や冊子版の情報商材の購入も、多くの場合は通信販売に該当します。したがって、ダウンロード版の場合と同様に、販売業者の広告等に返品特約に関する記載がなければクーリングオフが可能です。
その他にも、DVDや冊子という「物」があることから、以下のような契約類型でクーリングオフが可能となることがあり得ます。
訪問販売の場合
訪問販売で情報商材を売りつけられた場合は、無条件でクーリングオフができます。
販売業者が消費者の自宅に訪れた場合の他、以下のような経緯で路上、あるいは喫茶店やファミリーレストラン、ホテルのロビー、ラウンジなど、販売業者の事業所以外の場所で商談をした場合も訪問販売に含まれます。
- 路上で声をかけられて勧誘された(キャッチセールス)
- メールやSNSなどでアポを取って呼び出された(アポイントメントセールス)
電話勧誘販売の場合
電話勧誘販売で情報商材を売りつけられた場合も、無条件でクーリングオフが可能です。
販売業者が電話をかけてきて情報商材の購入を勧められた場合の他、SNSやメルマガなどで「あなたには特別会員の資格があるので、優待価格で情報商材を購入できます」などと勧誘され、消費者の方から電話をかけるように仕向けられた場合も、電話勧誘販売に含まれます。
連鎖販売取引の場合
連鎖販売取引とは、以下のように販売員を次々に加入させ、販売組織を連鎖的に拡大させる取引のことで、簡単にいうとネットワークビジネスのことです。
- 商品の購入者(Aさん)が販売組織に加入する
- Aさんが別の人に商品を売り、販売組織に加入させると紹介料がもらえる
- 新たに加入した会員がさらに別の人に商品を売ると、Aさんにマージンが入る
DVD版や冊子版の情報商材は、ダウンロード版とは異なり「物品」ですので、ネットワークビジネスの「商品」として利用されることがあります。連鎖販売取引の一環として情報商材を購入してしまった場合は、無条件でクーリングオフができます。
業務提供誘引販売取引の場合
業務提供誘引販売取引とは、販売業者が何らかの仕事を提供することを約束し、その仕事に必要であるとして情報商材の購入を要求する取引のことです。
例えば、デザイン制作のノウハウを解説した情報商材の販売業者が、「この商材の購入者には優先的にデザイン制作の案件を紹介します」といった条件で販売するようなケースが業務提供誘引販売取引に該当します。
業務提供誘引販売取引で情報商材を購入した場合も、無条件でクーリングオフが可能です。
クーリングオフができる期間
情報商材をクーリングオフできる場合でも、その期間は意外に短いので、該当する場合は早めに手続きを行う必要があります。
クーリングオフができる期間は、以下のように契約類型によって異なります。
契約類型 | クーリングオフの 可能期間 |
可能期間の始期 |
---|---|---|
通信販売 | 8日 | 情報商材をダウンロードした日 |
訪問販売 | 8日 | 法定書面を受領した日 |
電話勧誘販売 | 8日 | 法定書面を受領した日 |
連鎖販売取引 | 20日 | 法定書面を受領した日 |
業務提供誘引販売取引 | 20日 | 法定書面を受領した日 |
消費者からの意思表示を内容証明郵便などで上記の期間内に発信すれば、申込みの撤回や契約の解除の法的効果が生じます(発信主義)。販売業者に到達するのが上記の期間経過後となっても構いません。
なお、法定書面とは、商品の内容や引き渡し時期、代金などの契約内容の他、クーリングオフに関する事項も記載された書面で、契約の際に販売業者が消費者に交付することが義務付けられている書面のことです。
この書面が交付されていないか、交付されたとしても記載事項に不備がある場合は、いつまでもクーリングオフが可能ということになります。
クーリングオフの方法
次に、クーリングオフの具体的なやり方をみていきましょう。
内容証明郵便の送付が望ましい
特商法上、クーリングオフは「書面または電磁的記録」により行うこととされています。
「書面」による場合は、ハガキでも封書でも構いません。
「電磁的記録」による方法としては、メールの他、販売業者のホームページ上のお問い合わせフォームからの送信などが考えられます。
ですが、クーリングオフをするなら、内容証明郵便で契約解除通知書を作成し、送付することが望ましいです。内容証明郵便は、いつ・誰が・どのような内容の文書を・誰に送付したのかを郵便局が証明してくれる郵便です。
内容証明郵便を送付することで、所定の期間内に申込みの撤回や契約の解除の意思表示を行ったことを公的に証明できるので、後のトラブルを防止できます。万が一、トラブルが発生した場合も、裁判などで内容証明郵便が有力な証拠となるので安心です。
内容証明郵便に記載すべき事項
クーリングオフの内容証明郵便に記載すべき事項は、法律で明確に定められているわけではありません。一般的には、以下の事項を記載します。
- タイトル(「契約解除通知書」など)
- 契約(申込み)の年月日
- 販売会社名
- 商品名
- 代金額
- クーリングオフにより申込みの撤回または契約の解除を行う旨
- 返金の受取口座(金融機関名、支店名、預金の種類、口座番号、口座名義)
記載事項に不備があると、申込みの撤回や契約の解除の法的効果が生じないおそれがあるので、漏れなく記載しましょう。
返金については交渉が必要なことも
クーリングオフは意思表示をするだけで法的な効果が生じますが、販売業者が素直に返金してくれるかどうかは別問題です。
業者によっては、無視したり、理不尽な反論をして返金を拒むこともあります。そのため、返金を求めて交渉が必要となることもあります。
悪質な業者に対しては、交渉を重ねるよりも裁判を起こした方がよいかもしれません。そのあたりの戦略は、弁護士または司法書士という法律の専門家に相談して検討するとよいでしょう。
クーリングオフ妨害にあったときの対処法
返金に応じない業者の他にも、様々な手口でクーリングオフを妨害する業者がいます。例えば、以下のような手口が多く見受けられます。
- 「この契約はキャンセルできない」と虚偽を告げ、クーリングオフを諦めさせる
- 「こちらも損害賠償を請求する」などと脅迫する
- 「クーリングオフをするなら事務所で手続きをしてもらう必要がある」などと無理な要求をする
クーリングオフ妨害にあった場合には、所定のクーリングオフ可能期間が過ぎた後でもクーリングオフが可能です。毅然とした態度で、手続きを行いましょう。
また、クーリングオフ妨害は犯罪行為であり、特商法で「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方」という刑事罰が定められています。そのため、警察に通報することも有効です。
情報商材詐欺の場合は他にも返金方法がある
情報商材でクーリングオフが可能なケースは多くありませんが、詐欺的な情報商材を購入させられた場合には、泣き寝入りをする必要はありません。
でたらめな内容の情報商材を高額で売りつけられた場合など、情報商材詐欺にあった場合には、以下の法的根拠をもって返金請求が可能です。
- 詐欺による契約取消し
- 債務不履行による契約解除
- 消費者契約法に基づく契約取消し
- 不法行為による損害賠償請求
販売業者に対してこれらの主張をする場合、交渉がまとまらずに裁判が必要となる可能性もあります。
その前に、以下のような方法によって返金が受けられる可能性もありますので、まずは試してみるようにしましょう。
- 返金保障がある場合は申請する
- 決済代行業者に相談し、交渉する
- 送金先の銀行口座の凍結を要請する
- クレジットカード会社に支払い停止の抗弁を申請する
- クレジットカード会社にチャージバックを申請する
- 詐欺罪として警察に被害届や告訴状を提出する
情報商材を購入して後悔したときは弁護士・司法書士に相談を
情報商材が詐欺に当たるかどうかは別として、購入して後悔する人は少なくありません。納得できないときは、弁護士または司法書士に相談してみることを強くおすすめします。
法律の専門家のサポートを受けることで、以下のメリットが得られます。
- クーリングオフが可能かどうかがわかる
- クーリングオフが可能であれば、手続きを依頼できる
- クーリングオフ以外の方法による返金の可否を判断してもらえる
- 返金可能な場合は、最適な方法を提案してもらえる
- 依頼すれば、返金手続きを一任できる
- 返金される可能性が高まる
まとめ
情報商材でクーリングオフが可能なケースは少ないと申し上げましたが、実際に可能なケースもありますので、まずは弁護士・司法書士に相談し、アドバイスを受けられた方がよいでしょう。
他の方法で返金が受けられることもありますので、すぐに泣き寝入りすべきではありません。納得できない場合は、弁護士・司法書士の力を借りて、返金を求めていきましょう。