結婚詐欺は昔からある古典的な特殊詐欺の手口ですが、マッチングアプリやSNSのようなネットでの男女の出会いが増える中、結婚詐欺に騙される被害者が増えています。
その手口も日本人の詐欺師だけでなく、国際ロマンス詐欺のように外国人詐欺師からお金を騙し取られるケースも多発しています。
交際相手が結婚詐欺師かもしれない?と思ったら、まずはお金を絶対に渡さないことが前提ですが、お金を支払ってしまった場合は適切な対処が必要です。
この記事では、結婚詐欺とはどのような手口なのか、詐欺師の特徴、引っかかってしまったときの対処法について解説します。
結婚詐欺とは
結婚詐欺とは、恋愛感情を抱かせ結婚する約束をして安心させた後、うまく口車に乗せてお金をだまし取ってから行方をくらます特殊詐欺の一種です。
男性詐欺師は経営者、医者などの高収入でハイスペックな職業をかたって女性を騙します。一方で女性詐欺師は若さや美貌を武器に中高年男性にアプローチするケースが多いです。
詐欺の目的の大半はお金を支払わせることですが、それ以外にも「宗教への勧誘」「高額商品を購入させる」「マルチ商法や詐欺の手伝いをさせる」といった事例もあります。
いずれにしても、「結婚しよう」と甘い言葉をささやいてくる相手が怪しいと感じたら、言われるままに対応しない、金銭を支払わないことです。
そして、そのような相手とはできるだけ早く関係を解消することが大切です。
結婚詐欺師はどこに出没するのか
結婚詐欺師は、男女の出会いの場があるところなら、どこにでも出没します。ネットやリアルな場を使ってさまざまなかたちでアプローチしてきますので、「相手が怪しい」「心当たりがある」という方は注意しましょう。
マッチングアプリ
コロナ渦の影響で男女がリアルな場で出会う機会が減ったせいか、マッチングアプリを利用して交際相手や結婚相手を探す男女が増えていますが、詐欺師はそれを見逃しません。昨今、最も詐欺師が利用しているネットサービスと言えるでしょう。
自分のプロフィールには、魅力的な自分を演出しています。男性詐欺師は「高級車」「タワマン」「ヨット」などを所有するリッチマンを装ったり、女性詐欺師は「セクシーショット」「料理写真」を載せて、魅力的な女性を演じます。
そのような誰が見てもモテるようなキャラクターがアプローチしてきたら要注意です。
結婚相談所
結婚相談所は真剣に結婚相手を探す場ですので、詐欺師にとってはカモとなる相手が見つかる可能性が高いため、よく出没します。
詐欺師は偽造した身分証明書や収入証明を作成して巧妙に入会します。ここでも男詐欺師は高収入の経営者や医師など、結婚相手として好条件の職業を騙って、お金を持っている女性を釣ろうとするケースが多いです。
また、女詐欺師は自分より一回り以上年上の男性をターゲットにすることが多いです。好条件の相手から交際を求められた場合には、疑ってかかったほうが良いかもしれません。
各種セミナー
セミナーや交流会のような人が集まる場にも詐欺師はよく来ます。特に投資や貯蓄のようなお金に関するセミナーなどによく出没します。
そこで、目星を付けた男女に近寄ってきて親密になってから、嘘の投資話を持ちかけるなどして、お金を入金させて騙し取ろうとします。
SNSをフォローして近づいてくる|国際ロマンス詐欺
インスタグラムやフェイスブックなどのSNSにフォローして近づいてくる怪しい外国人には要注意です。ここ数年、国際ロマンス詐欺と呼ばれる、外国人が恋愛感情を持たせて投資に誘い込む詐欺の手口が増えています。
韓国人、シンガポール人、台湾人のイケメンや美女の写真を使ったり、富裕層を装ったりしますが、これは他人の写真の盗用であり、プロフィールは真っ赤な嘘です。
結婚の約束をして信用させてから、仮想通貨やFX投資に誘導してお金を騙し取るのがお決まりですので、要注意です。
結婚詐欺の手口
結婚詐欺師の目的のほとんどはお金です。相手がお金を持っているとわかれば、「結婚したい」と思わせるような、キャラクターになりすまし、さまざまな手口を使って騙し取ろうとします。
【男詐欺師】高収入・ハイスペックな男性を装う
女性が結婚相手に求めるケースで多いのは高収入でハイスペックな職業の男性です。それをわかっている男性詐欺師は、経営者、医者、弁護士、商社マンなどを装って、女性の関心を惹こうとします。
【女詐欺師】良妻賢母の女性を装う
男性が結婚相手に求めるケースで多いのは、「若さ」「美貌」「性格」さらには良妻賢母になってくれるようなタイプの女性です。
最近では、ダブルインカムのように共働きを求める男性も増えているため、キャリアウーマンを演じる女詐欺師もいます。そのような「結婚したい」と思わせるような女性を演じて、結婚の約束をしてお金を引き出すのが女詐欺師の手口です。
甘い言葉でアプローチしてくる
詐欺師はお金を引き出すために、まずは相手の心を掴むことから始めます。そのため、最初は頻繁にメールや電話で、「愛している」「結婚したい」「一緒に暮らそう」「大切にするよ」などと、甘い言葉をささやき続けます。
こうなると、いつの間にか洗脳されてしまいます。相手からお金が必要と言われたら、「出してあげよう」と思うように仕向けるのが詐欺師の手口です。
頃合いを見てお金の話を持ち出してくる
相手の心を掴んだとみるや、頃合いを見てから、お金を支払わせようとします。
詐欺師は事前に「結婚生活の設計のため…」などと称して、あなたがどれぐらいの預貯金を持っているのか、さり気なく聞いてきます。
その金額に応じて、以下のようにさまざまな手口を使ってお金を引き出そうとします。
- 「必ず儲かる投資話しがあるからお金を私に預けて」
- 「一緒に暮らすためのマンションを買うから頭金を用意して」
- 「交通事故を起こしてしまって、今すぐ被害者にお金を払わなくてはならない」
- 「会社のお金を持ち逃げされたので、つなぎ資金が必要」
- 「銀行に行けないので、代わりに取引先に入金をしてほしい」
少しでも支払ってしまうと、歯止めが効かなくなります。詐欺師もさらに要求を強くしますので、相手の要求がおかしいと思ったら一銭も支払わないことです。
結婚詐欺師の特徴
結婚詐欺師には共通した特徴というものがあります。以下にいくつか該当する場合、詐欺師の可能性が高いため、早めに対処する必要があります。
名刺をくれない
詐欺師はできるだけ自分の情報を誤魔化そうとします。例えば、名刺を求めても、「切らしている…」「今は作っていない…」などと、曖昧にします。
そもそも職業や勤務先は嘘なので、名刺は作っていないためです。交際相手が仕事や職場についてもあまり話したがらないようなら、疑ってかかったほうが良いでしょう。
住所を明かさない
詐欺師は住んでいる大体の場所や最寄り駅は教えてくれても、住所について明かさないことが多いです。偽の住所に交際相手が押しかけてくることで、詐欺が発覚することを恐れるためです。
「家に行きたい」「贈りたいものがある」などと伝えても、相手が住所を教えようとしないなら、詐欺師の可能性が高いでしょう。
家族に会わせてくれない
結婚の約束をしたら、大抵は親に挨拶に行くものです。しかし詐欺師は家族の存在(職業や居住地)についても交際相手には嘘の情報を教えます。
そのため、親に会いたいと言ってもはぐらかそうとします。
自分の友人に会おうとしない
仲の良い友人には、結婚前に自分の婚約者を「紹介したい」「顔合わせをしたい」と考える方は多いでしょう。
しかし、詐欺師の場合、「他人に顔を知られたくない」「いろんな質問をされて嘘がばれないようにしたい」といった理由があるため、友人に会うことを拒むケースが多いでしょう。
何かと理由をつけて友人に会おうとしないならば、詐欺を怪しむべきです。
写真を撮られることを嫌がる
恋人同士が一緒に旅行に行けば、記念写真は必ず撮るものですが、詐欺師は自分の顔写真が痕跡として残ることを嫌がります。警察が詐欺罪の捜査に入った場合、写真は大きな証拠となるからです。
そのため、「写真は苦手だ…」などと言って、写真を撮られることを嫌がる傾向があります。かたくなに拒むようなら、相手は詐欺師の可能性は高くなるでしょう。
相手が詐欺師かも?と思ったときに自分で調べる方法
「結婚を約束した相手にお金を貸してくれと言われた…」「詐欺師かもしれない…」と思ったら、お金を渡すのは絶対に止めましょう。
また、真実を知るためにも、以下のような方法で相手のことを詳しく調べる必要があります。相手が怪しいと思ったら、まずはこれまで知り得た相手の情報をもとに自分で調べてみることです。
相手の名前を検索エンジンやSNSで調べてみる
検索エンジンやSNSの検索窓に相手の名前を入力して調べてみましょう。相手が詐欺師の場合、仮名を使っている可能性が高いため、名前やプロフィールは検索にはヒットしないでしょう。
しかし、自分と同じ手口の詐欺被害に遭っている人が情報をアップしているかもしれませんので、その人と情報交換をすることで有力な情報が得られるでしょう。
勤務先に電話して在籍の有無を確かめる
例えば、病院や大企業に勤めているということなら、思い切ってその職場に電話して実際にいるかどうかを確かめてみてもよいでしょう。
病院や企業も電話受付に名前と部署名を伝えれば、その人が在籍しているかは必ず回答してくれます。実在の人物かどうかを白黒はっきりできるでしょう。
顔写真があればGoogle類似画像検索を試してみる
Googleの画像検索機能に「類似画像検索」というものがあります。写真をアップロードすれば、AIで判別した似たような顔の人が画像検索結果に表示されます。
もしも同じ人物の画像が見つかったとして、タグ付けされた名前と本人の名前が一致しなければ、複数の名前を騙っていることがわかります。
【参考】:Googleで画像を使って検索する
直接本人に問い詰めてみる
前項で調べた情報をもとに怪しい点を例に出して本人に問い詰めてみるのも白黒はっきりさせるためには必要なことです。
「私を騙していませんか?」「結婚するなら身分証明を見せて!」といったように、個人情報を提示させる方向に話しを持っていくことです。
やましいことがなければ、婚約者に自分の免許証や保険証など個人情報を見せることは普通のことです。それを断るような相手は結婚相手としてふさわしくないでしょうし、詐欺師の可能性も大です。
詐欺師にお金を支払ってしまった場合の対処法
すでに大金を支払ってしまった場合の対処法は異なります。相手から返金がなされなければ詐欺確定ですし、詐欺罪として逮捕や全額返金させなくてはなりません。
お金を騙し取られたときの適切な対処法についてご説明します。
警察に捜索してもらう
結婚詐欺は気持ちを踏みにじられ、しかも大金を騙し取られたならば、罰則を与えて腹いせをしたいと思うのは当然のことです。「結婚詐欺」の法定刑は10年以下の懲役となり、罰金刑はありませんが、警察に逮捕してほしいと思うことでしょう。
まずは警察に刑事事件として認めさせた上で捜査に入ってもらうべきですが、色恋がともなうような案件は、例え相手に大金を支払ったとしても、「同意の上で払ったのではないか…」といったように民事事件として扱われ、警察は動かないケースが多いのが事実です。
しかし「相手が偽名を使っている」「職業を偽っている」「他にも大金を取られた詐欺被害者がいる」といった証拠があれば、警察も本腰を入れて捜査に乗り出す可能性が高くなります。
警察に被害届を出す際には、詐欺を立証するだけの十分な証拠を集めておく必要があります。
【被害届の記載内容】
- 相手の住所・氏名・職業・年齢
- 被害日時
- 被害内容
- 被害額・入金日・口座番号
- 詐欺師の写真
- その他
お金を払ってしまったら弁護士・司法書士に依頼して返金させる
大金を騙し取られた場合、速やかに全額返金させたいものです。返金させるためには弁護士・司法書士に依頼して返金交渉をおこなってもらうのが一般的です。
詐欺師の所在が分からないので交渉できないと思われるでしょう。しかし、弁護士には「弁護士会照会制度」というものがあります。
弁護士に詐欺案件の返金請求を依頼すれば、この制度を利用して職場や金融機関・電話会社に照会をすることができるため、詐欺師の住所を突き止めることが可能です。
そうなれば速やかに返金交渉に入れる可能性がありますが、弁護士が動いたことで詐欺師は行方をくらますかもしれません。そうなった場合は探偵に人物調査を依頼することになります。
探偵に人物調査を依頼する
「相手が怪しい」「詐欺師かもしれない」と思ったら、探偵に詐欺師の人物調査や住所特定調査を依頼することが有効です。
デートの後に探偵が相手を尾行・張り込みすることで住所特定やどのような人物なのかを調べることができます。探偵が集めた人物情報により、弁護士が返金請求できるようになり、また警察も詐欺罪を認めて捜査に動いてくれるかもしれません。
詐欺師の所在や拠点などを突き止めたいならば、詐欺調査に強い探偵事務所に依頼することをおすすめします。
まとめ
結婚詐欺の被害に遭うと精神的にも金銭的にも大きなダメージを受けます。そのまま泣き寝入りするのはつらいことでしょう。
お金を返金させたい、逮捕させたい場合には、弁護士・司法書士、探偵、警察といった専門家に相談して適切な方法で解決を図ることをおすすめします。