- クラウドファンディングを悪用した詐欺が多発している
- 詐欺の手口を知ることで事前にチェックすべきポイントがわかる
- 詐欺案件のプロジェクトページには共通した特徴がある
- クラウドファンディング詐欺で返金を求めるには迅速な対処が重要である
近年、クラウドファンディングという新しい資金調達方法が注目を集めています。魅力的な事業構想などをインターネットで公表すれば、不特定多数の人から多額の資金を集めることが可能な方法です。
起業家(起案者)にとっては、金融機関から借金をしなくても資金を調達できます。出資者にとっても、魅力的なリターンが得られたり、手軽に社会貢献できたりするというメリットがあります。
しかし、このクラウドファンディングという仕組みを悪用して詐欺が行われるケースも少なくありません。出資する際には十分に注意する必要があります。
そこでこの記事では、クラウドファンディング詐欺にあわないよう、詐欺の手口や見分け方、さらには詐欺にあったときに返金を求める方法についても解説します。
クラウドファンディングとは
クラウドファンディング詐欺は許せない犯罪行為ですが、そもそもクラウドファンディングには構造的に詐欺が生じやすい問題が潜んでいることも否定できません。
まずは、クラウドファンディングの仕組みや種類、詐欺が生じやすい理由を確認しておきましょう。
クラウドファンディングの仕組み
クラウドファンディングとは、インターネットを介して不特定多数の人から少しずつ資金を集めることにより、多額の資金を調達することが可能な手法のことです。
「群衆」(クラウド)から「資金調達」(ファンディング)を行うものなので、クラウドファンディングと呼ばれています。
その仕組みは、まず資金を要する人(起案者)がインターネット上の専用サイトに登録し、プロジェクトの計画や必要とする出資金額などを公表します。
出資者はサイト上で数多くの案件をチェックし、魅力を感じたり共感したりするプロジェクトがあれば、サイト管理者が設定した口座に出資金を振り込みます。
出資金が起案者の設定した目標金額に達するとサイト管理者から起案者に振り込まれ、起案者は必要な資金を獲得できます。ただし、一定の手数料がサイト管理者によって差し引かれます。
出資者は、プロジェクトの進捗に応じて商品やサービス、利益の配当などのリターンを受け取ることができます。
融資ではないので、起案者は受け取った出資金を返済する必要はありません。出資者にとっては、自分が気に入ったプロジェクトに投資し、その事業の伸展を見守ることができるというメリットがあります。
クラウドファンディングの種類
クラウドファンディングの専用サイトには多種多様なプロジェクトが登録されていますが、その内容によって以下の3つの類型に大きく分類できます。
- 購入型クラウドファンディング
- 投資型クラウドファンディング
- 寄付型クラウドファンディング
購入型クラウドファンディングとは、主に新規事業の立ち上げや新商品・新サービスの開発などのプロジェクトで資金を調達するものです。順調に事業が進展すると、起案者から出資者へ商品やサービスが提供されます。
投資型クラウドファンディングも主に新規事業の立ち上げで資金を調達するものですが、起案者から出資者へのリターンが商品やサービスの提供ではなく、利益の配当という形で行われます。
寄付型クラウドファンディングは、主に被災地への支援や動物保護活動、あるいは難病の治療などのように直接的な利益を生まないプロジェクトのために資金を調達するものです。起案者から出資者に対して経済的なリターンは行われませんが、出資者はプロジェクトの進展に関する報告を受け、精神的なリターンを得ることができます。
詐欺が生じる理由
クラウドファンディングでは、出資者が必ずしも期待したリターンを得られるとは限りません。
そもそも起案者が提示したプロジェクトが成功する保証はありませんし、失敗したとしても起案者は何らかの責任を負うものではありません。出資者はそのリスクを承知した上で出資しなければならないという仕組みになっているのです。
この仕組みを悪用すれば、詐欺ができてしまいます。最初から資金を騙し取るつもりで適当なプロジェクトを提案するケースもあれば、資金を調達してから魔が差してお金を持ち去るようなケースもあります。
クラウドファンディング詐欺の手口
次に、クラウドファンディング詐欺の手口をさらに細かくご紹介します。詐欺による被害を回避できるよう、事前にしっかりと確認しておきましょう。
リターン品が届かない
購入型クラウドファンディングでは、リターンとして約束していた商品やサービスが届かないという手口の詐欺が多発しています。
商品やサービスの開発には時間がかかることもありますが、数ヶ月待っても届かない場合には詐欺を疑った方がよいでしょう。
待っている間に起案者と連絡がとれなくなるケースも多いので、起案者に対して適宜報告を求めることも大切です。
事前の説明とは異なるリターン品が届く
また購入型クラウドファンディングで多い詐欺の手口として、一応はリターン品が届けられるものの、プロジェクトページで説明されていた商品やサービスとは異なるものが届くというものもあります。
例えば、事前の説明よりも安価な素材が商品に使用されていたり、明らかに性能が劣る商品が送られてきた、というようなケースです。
起案者に問い合わせると「当社の技術力では、これが限界です」などと言い訳されることもありますが、やはり連絡がとれなくなることもよくあります。
プロジェクトが突然中止となる
出資金を獲得しておきながら、「このプロジェクトには問題が発覚したので中止します」「諸事情によりプロジェクトを継続できなくなりました」などと突然告げられ、お金を持ち逃げされるという手口の詐欺もあります。
プロジェクトが成功しなくてもシステム上は起案者に返金の義務はないことから、この仕組みを悪用した手口といえます。
出資金が別の用途に使われる
一般的に起案者はプロジェクトページにおいて出資金の使い途も説明していますが、実際に獲得した出資金は起案者が自由に使うことができます。
この仕組みを悪用して、出資金が別の用途に使われるという手口の詐欺もあります。多くの場合、出資金が起案者の私用に使われます。つまり、欲しいままに着服されるのです。
この手口の詐欺は寄付型クラウドファンディングで特に多く見受けられます。出資者はお金を騙し取られる上に、善意を踏みにじられることになります。
虚偽・架空のプロジェクトで出資を募る
返済義務のない資金を獲得できるというクラウドファンディングの仕組みを悪用した詐欺の手口として、最初から虚偽や架空のプロジェクトで出資を募り、集まったお金を持ち逃げするという手口もあります。
有名な事例として、既に病気で亡くなった飼い犬をまだ生きているように見せかけ、「治療費が必要です」と訴えかけて多額の資金を騙し取ろうとしたケースがありました。
クラウドファンディング詐欺に遭わないために~詐欺の見分け方
詐欺にあってからでは起案者と連絡がとれなくなってしまうことも多いので、クラウドファンディング詐欺は事前に見抜くことが極めて重要です。
詐欺を見分けるためには、出資金を振り込む前に以下のポイントに注意しましょう。
起案者の実態に不審な点はないか
まずは、起案者が信用できる人物や団体であるのかを確認する必要があります。可能な限り起案者に関する情報を集めて、不審な点がないかをチェックしましょう。
プロジェクトページに起案者の名称や所在は掲載されていても虚偽の可能性もありますので、検索するなどして実在するかどうかを確認すべきです。
さらに念を入れて、起案者が運営しているホームページやSNS、ネット上の評判なども調べて、その実態を探った方がよいでしょう。
実態がよく見えない場合や、何となく怪しいと感じる場合には、出資を見送った方が無難です。
プロジェクト内容や画像が使い回しのものでないか
虚偽や架空のプロジェクトでは、プロジェクトページの文面や画像にどこか不自然な点があるものです。
他人のプロジェクトを参照して説明文が作成されていたり、他のWebサイトから無断転用した画像や無料素材の画像ばかり使われているようなことがよくあります。
プロジェクト内容が魅力的に感じても、不自然な点があれば出資は保留すべきです。そのプロジェクトページでコメントするなどして起案者に問い合わせてみてもよいでしょう。
出資金の使い途が明確に記載されているか
出資金の使い途を事前に確認しておくことも大切です。誠意のある起案者は、何にどれくらいのお金が必要なのかを明確にして、プロジェクトページに記載しているものです。
プロジェクトによってはお金の使い途の明細までを事前に決定することが難しいものもありますが、何に出資金が使われるのかが不明瞭な場合には注意が必要です。
目標金額が適切に設定されているか
起案者が専用サイトにプロジェクトを掲載するときには、「目標金額」を設定する必要があります。この目標金額がプロジェクトの内容に見合った適切な水準に設定されているかを確認しましょう。
虚偽や架空のプロジェクトでは目標金額も適当に設定されるため、その金額が適切な水準となっていないことがよくあります。
詐欺師は多くのお金を騙し取りたいので高すぎる設定となっていることが多いですが、確実にお金を受け取るために低すぎる設定となっていることもあるので注意が必要です。
出資金の使い途に関する記載と併せて、慎重に確認すべきです。
クラウドファンディング詐欺にあったときの対処法
ここまで、クラウドファンディング詐欺の手口と見分け方を解説してきました。
しかし、そもそもクラウドファンディングは詐欺が発生しやすい仕組みであるため、注意していても詐欺にあってしまう危険性は否定しきれません。
そこで次に、クラウドファンディング詐欺にあったときの対処法をご紹介します。放置していると犯人が逃げ去ってしまう可能性が高いので、詐欺に気付いたら直ちに以下の対処を図りましょう。
証拠を確保する
解決に向けて動き出す前に、まずは証拠を確保する必要があります。詐欺行為と被害の実態を証明できる証拠がなければ以下の対処法が功を奏さないことがありますので、落ち着いて証拠を確保しましょう。
確保すべき証拠は、主に以下のようなものです。
- プロジェクトページをスクリーンショットなどで保存したもの
- プロジェクトページのURL
- リターン品が届いている場合はその実物と写真
- 出資金を送金した際の振込記録やクレジットカードの利用明細
- 詐欺起案者とのメッセージのやりとり
起案者に問い合わせる
直接的な解決方法として、起案者に問い合わせてみることが挙げられます。詐欺にあったと思っていても起案者に悪気はなく、プロジェクトの進行が遅れているだけという可能性もあります。その場合には、その旨の回答が得られるでしょう。
起案者に問い合わせるときの注意点は、感情的になって問い詰めない方がよいということです。詐欺師なら、被害者から問い詰められると連絡を絶ち、逃げてしまう可能性が高いからです。冷静かつ事務的に、プロジェクトの進捗状況を尋ねるようにしましょう。
このときのやりとりについても証拠化し、保管しておくべきです。できる限りメールや文書など記録に残る形でやりとりしましょう。電話連絡の場合は録音することをおすすめします。
サイト運営者に相談する
起案者が誠意のある対応をしない場合には、クラウドファンディングのサイト運営者に相談するのもひとつの方法です。
運営者から起案者に連絡してもらえたり、規約違反により処分することを警告してもらえたりすることにより、事態が解決に向かうこともあります。
ただし、サイト運営者はあくまでも起案者と出資者を仲介する役割に過ぎず、当事者間のトラブルについて責任を持って対応してくれるわけではないことに注意が必要です。
警察に相談する
詐欺は犯罪ですので、警察に相談することも有効です。証拠に基づいて被害届や刑事告訴の手続きをすれば、警察の捜査により起案者を検挙してくれる可能性があります。
警察は民事の問題に関わらないのでお金を取り戻してくれるわけではありませんが、犯人が見つかれば返金請求もしやすくなります。
詐欺被害に関する相談は主に各警察署の生活安全課で受け付けていますが、警察相談専用電話「#9110」にかけると最寄りの相談窓口につながるので便利です。
国民生活センターに相談する
国民生活センターでは、様々な消費者トラブルに関する相談を無料で受け付けています。クラウドファンディング詐欺の被害についても相談可能です。
専門の相談員が解決方法をアドバイスしてくれるので、一般的な解決方法を知りたい場合に有効な相談先となっています。
相談後、「裁判外紛争解決手続」(ADR)を申請して解決を図ってもらうことも可能です。
国民生活センターに相談したい場合は、消費者ホットライン「188」に電話すると便利です。最寄りの相談窓口を案内してもらえます。
ADR手続きを利用する(自力で解決したい場合)
ADR手続きとは、裁判によらず法的トラブルを解決する手続きのことです。裁判所以外の中立・公正な機関が当事者の間に入り、柔軟な解決を図ってくれます。
国民生活センターでも「和解の仲介」および「仲裁」というADR手続きを扱っており、無料で利用可能です。
ただし、相手方がADR手続きに応じる義務はないので、必ずしも納得のいく解決が得られるとは限りません。司法書士や弁護士に依頼せず無料で解決を図りたいという場合には、ADR手続きの利用を検討してみるとよいでしょう。
クラウドファンディング詐欺で返金を求めるなら司法書士・弁護士へ
以上の対処法により一応の解決を図ることが可能ですが、クラウドファンディングの詐欺起案者に対して返金を求めるなら、司法書士または弁護士に依頼することを強くおすすめします。
法律の専門家の力を借りることで、以下のメリットが得られます。
最適な解決方法がわかる
有効な解決方法は状況によって異なることがあります。起案者との交渉で柔軟に解決する方が望ましいケースもあれば、法的措置により徹底的に争う方が望ましいケースもあるものです。
また、返金請求を行う前に起案者の居場所や連絡先を突き止める必要があるケースも少なくありません。
司法書士・弁護士に相談すれば、豊富な経験に基づいて、状況に応じて最適な解決方法を正しい順序で提案してくれます。
交渉による返金が期待できる
クラウドファンディング詐欺の被害で最も理想的な解決方法は、起案者との交渉で速やかに全額を返金してもらうことです。
しかしながら、詐欺を働くような起案者が素直に返金に応じる可能性は低いですし、個人が対等に交渉することも難しいのが実情です。
司法書士・弁護士は知識と経験に基づく交渉術に長けていますし「法的措置をとる」と警告もしてくれます。
詐欺起案者に心理的プレッシャーを与えて説得的に交渉してくれるので、スムーズな返金も期待できます。
法的措置も一任できる
交渉で解決できない場合には、訴訟や差し押さえなどの法的措置をとって強制的な解決を図る必要があります。
ただ、裁判所での手続きは複雑・難解なものであり、専門家でない個人が的確に進めることは極めて難しいという実情があります。
厳格なルールに則って相手の詐欺行為や被害の実態を立証できなければ、返金を得ることはできないのです。
その点、認定司法書士や弁護士に依頼すれば、代理人として法的措置を代行してくれるので、強制的に返金を得ることが期待できます。
まとめ
クラウドファンディングは、正しく活用すれば起案者・出資者の双方にとって魅力的な仕組みです。
ただし、構造的に詐欺が発生しやすいこともあり、実際にも詐欺の事例が多発しています。そのため、出資者として利用するなら事前に詐欺の手口を知り、見分けることが重要です。
万が一、詐欺の被害にあってしまった場合は詐欺起案者が逃げないうちに、本記事でご紹介した対処法を迅速にとる必要があります。
放置していると返金が難しくなってしまう可能性が高いので、詐欺に気付いたらすぐ、司法書士・弁護士に相談して解決を図りましょう。