- ネット通販詐欺とは、注文された商品を発送せず代金を騙し取る犯罪である
- 通販サイトを注意深く見れば詐欺サイトを見分けることも可能である
- ネット通販詐欺に遭ったら早急に相手の口座を凍結することが重要である
- 弁護士・司法書士に依頼すれば返金手続きでサポートを受けることができる
近年では多くの人がネット通販を利用して商品を購入していますが、詐欺に遭ってしまうケースも少なくありません。
「代金を振り込んだのに商品が届かない」
「注文した商品とは違うものが届いた」
「販売業者と連絡が取れなくなった」
このような場合は詐欺に遭った可能性が非常に高いので、早急に対処することが必要です。
この記事では、ネット通販詐欺の手口や特徴や、返金を受ける方法などをわかりやすく解説します。被害を回避したい方も、既に被害に遭ってしまった方も参考になさってください。
ネット通販詐欺とは?
ネット通販詐欺とは、インターネット上の通販サイトで商品を注文し、代金を前払いで振り込んだにもかかわらず注文した商品が届かず、販売業者と連絡も取れなくなり、代金を騙し取られるという手口の詐欺です。
Amazonや楽天市場、ヤフオク、メルカリなどに詐欺師が潜んでいることもありますが、これらの大手通販サイトでは不正行為を防止する措置が強化されているので、被害に遭うケースは減少しています。
それよりも、詐欺師が運営している悪質サイトで被害に遭うケースが増加していることが近年の特徴です。
全国の国民生活センターと消費生活センターには、毎年、被害者からの相談が数多く寄せられています。
2018 | 201,607 |
---|---|
2019 | 226,117 |
2020 | 280,861 |
2021 | 156,772 (前年同期200,858) |
2018 | 6,217 |
---|---|
2019 | 5,234 |
2020 | 4,932 |
2021 | 2,737 (前年同期3,331) |
【引用元】: 国民生活センター|インターネット通販・オークション
今後もネット通販の需要は高まり続けると考えられるので、利用者も詐欺に対する警戒を強めることが必要となります。
ネット通販詐欺の手口
次に、ネット通販詐欺の手口をご紹介します。詐欺の被害に遭わないためにも、被害に遭ったときにいち早く気付くためにも、しっかりと確認していきましょう。
代金を支払ったのに商品が届かない
典型的な手口は、商品を注文し、代金を先払いしたにもかかわらず商品が届かないというものです。
購入者が販売業者に連絡を取ろうとしてもつながらなかったり、返信がなかったりして、返金されることもありません。
別の商品や粗悪品が届く
高額の代金を支払ったにもかかわらず、その金額に見合わない別の商品や粗悪品が届けられるという手口もあります。
販売業者に苦情を述べても、「写真と実物ではイメージが異なることがある」と言われるだけで、取り合ってもらえません。そもそも販売業者と連絡が取れなくなることもあります。
偽物の商品が届く
ブランド品の通販で多い手口として、偽物の商品が届けられるというものもあります。
購入者が偽物であることに気付かないこともありますが、気付いたときには、やはり販売業者と連絡が取れなくなっていることが多いです。
個人情報を悪用される
商品の受け渡しは正しく行われても、購入の際に入力した氏名、住所、電話番号、クレジットカード番号などの個人情報を悪用され、後に別の詐欺被害に遭うというケースもあります。
特に、個人情報の入力フォームでSSL(データを暗号化して送受信する仕組み)が利用されていないサイトでは、個人情報を悪用される可能性があると考えられます。
ネット通販詐欺の可能性が高いサイトの特徴
詐欺サイトには、いくつかの特徴があります。以下のような特徴が見受けられる場合、その通販サイトは詐欺師が運営している可能性が高いと考えられます。
URLが不自然
URLとは、Webサイトなどのインターネット上の住所ともいえるもので、ブラウザの上部に表示されます。「https://」または「http://」から始まり、主にアルファベットが羅列されているものです。
詐欺業者は大手の通販サイトには属していないため、独自ドメインを取得してサイトを開設することから、URLが不自然なものとなっていることがあります。
独自ドメインのURLでも優良な通販サイトは数多くありますが、URLが不自然なサイトについては以下の特徴も注意深く確認した方がよいでしょう。
サイト全体の見た目や日本語、フォントが不自然
詐欺サイトは詐欺師が個人で開設しているものなので、プロが開設した大手通販サイトに比べると、サイト全体の見た目が雑な感じであることが多いです。
また、不自然な日本語が記載されている場合は、海外の詐欺集団が解説した詐欺サイトである可能性があります。
極端に商品が安い
同じ商品でもネットショップでは店頭よりも安く売られていることがよくありますが、極端に安い価格が設定されている場合は警戒すべきです。
商品にもよりますが、他の通販サイトよりも大幅に価格が安い場合は詐欺を疑った方がよいでしょう。
入手困難な商品が出品されている
他の通販サイトでは売られていない、または品切れとなっている商品が、特定のサイトでだけ売られている場合も注意が必要です。
どうしても買いたいという消費者心理を突いた詐欺である可能性があります。
支払い方法が銀行振り込みのみ
代金の支払い方法が前払いの銀行振り込みのみとされていることが多いのも、詐欺サイトの特徴の一つです。
後払いや代引きとすると商品を発送しなければ代金を受け取れませんし、カード払いとした場合でも購入者からの申出によって取引停止となり、代金を受け取れない可能性があるからです。
もっとも、カード払いも可能と表示しておきながら、実際にはシステムエラーを装うなどして銀行振り込みをさせるという手口の詐欺サイトもあります。
振込口座が個人名義
詐欺師の多くは法人口座を持っていないため、個人口座を振込先として指定することが多いものです。外国人名義の個人口座を指定された場合は、外国人詐欺師である可能性が高いです。
もっとも、個人口座を指定する販売業者のすべてが詐欺師というわけではありません。逆に、詐欺師が非合法な手段で法人口座を入手している場合もあるので、口座名義だけで詐欺かどうかを見分けることは困難となっているのが実情です。
詐欺師は個人口座を使っていることが多い傾向にあるということはいえますので、特徴の一つとしてご理解ください。
会社概要の情報が不十分
詐欺サイトでも、会社概要や運営者情報がまったく掲載されていないような雑なサイトは少ないものです。
ただ、詐欺サイトには会社概要が掲載されていても、以下のような特徴があることがほとんどです。
- 住所が番地まで記載されていない
- 連絡先がメールアドレスしかない
- 電話番号が記載されていても携帯電話の番号である
見慣れない通販サイトを利用する際は、会社概要もしっかりと確認するようにしましょう。
特商法の表記がない
特商法(特定商取引法)とは、さまざまな商取引において弱い立場である消費者を保護するための法律です。
通販サイトには特商法に基づき一定の事項を表記することが法律で義務づけられています。特商法の表記がない通販サイトは法律を守っていないということなので、それだけでも悪質なサイトである可能性が高いといえます。
ネット通販詐欺でよくある事例
ここでは、ネット通販詐欺で実際によくある事例をいくつかご紹介します。具体的な事例を知ることで、ネット詐欺の手口について理解を深めていただければと思います。
商品が届かず販売業者と連絡も取れない事例
まずは、典型的なネット通販詐欺の事例です。
通販サイトで商品を購入し、代金を銀行振り込みしましたが商品が届きません。返金してほしいとメールで申し出ましたが返信がなく、サイト上に表示されていた販売業者の住所や電話番号は存在しないことがわかりました。どうすればよいですか。
【引用元】: 国民生活センター|通販サイトで購入した商品が届かず、販売業者と連絡が取れない
現在でも、このように典型的な手口で被害に遭う人は少なくないようです。購入申し込みをする前に、通販サイトや販売業者に関する情報をしっかりと確認することが大切です。
海外の通販サイトで詐欺に遭った事例
次は、海外の通販サイトで詐欺の被害に遭った事例です。
海外の楽器販売サイトで音楽機器をクレジットカードで購入しようとしたところ、「海外からの購入では入金方法は銀行振り込みになる」とメールがきました。購入前には商品について親身に相談に乗ってもらったこともあり、指定された口座(海外の銀行)に送金しました。すると商品も発送されず、それ以降連絡が取れなくなりました。海外通販では日本に比べて返答が遅いことが多いようで、そこまで疑ってはいなかったのですが、ここでショップサイトの不審な点に気付きました。電話番号で検索をかけてみると、家具にオーディオ、釣り具など多様なショップのウェブサイト(住所も異なる)があるのですが、それらのサイトの電話番号が全て同じになっています。またその電話番号が詐欺サイトである、などという英語の書き込みも発見しました。
【引用元】: 国民生活センター 越境消費生活センター|相談事例
海外の通販サイトの利用に慣れていない人であれば、支払い方法は銀行振り込みのみ、返答に時間がかかる、などと言われると「そういうものか」と信用してしまうこともあるでしょう。
しかし、海外サイトであっても、詐欺の可能性が高いサイトの特徴に当てはまる点があれば警戒すべきであるといえます。
偽物の商品を注文してしまった事例
次の事例も海外の商品を購入したケースですが、偽のブランド品であったため税関を通らず、商品を受け取ることができなかったというものです。
欲しかったブランド物のバッグをインターネットで探していたところ、格安で販売されているサイトが見つかったので、早速申し込み、クレジットカードの翌月一括払いで決済しました。ところが1週間後、税関から「認定手続開始(輸入者等意思確認)通知書(名宛人用)」が届きました。「コピー商品など(知的財産侵害物品)の疑いがある」と書かれています。販売業者のホームページには住所や電話番号の記載がなく、何度メールしても返信がありません。商品は受け取れないようなのですが、クレジットカードの支払いはどうなりますか?
【引用元】: 消費者被害防止ネットながさき|インターネット通販詐欺
販売業者のホームページに住所や電話番号の記載がなかったということですので、詐欺サイトである可能性が極めて高いと考えられます。
購入申し込みをする前に販売業者の情報を確認することの必要性がよくわかる事例であるといえるでしょう。
ネット通販詐欺に遭わないための注意点
ネット通販詐欺の被害に遭わないためには、事前に以下の点に注意することが大切です。
サイトに不自然な点がないか注意する
まずは、通販サイトのURLや全体の見た目、日本語の表現、フォントなどに不自然な点がないかを注意してみてみましょう。
違和感を感じた場合は、会社概要や運営者情報の確認を欠かさないようにしてください。これらの情報が掲載されていないか、記載が不十分である場合は利用を控えた方が無難です。
サイト運営者や出品者の情報を検索する
サイト運営者や出品者の情報が掲載されているものの、詐欺師かどうかの判断が難しい場合は、ネットで検索してみることをおすすめします。被害に遭った人などからの投稿により、詐欺師であると判明することがあります。
特に情報がヒットしない場合も、怪しいと考えた方がよいでしょう。検索した結果、口コミや評判が良好である場合にのみ購入申し込みに進むようにしましょう。
安い商品やレアな商品には要注意
店頭では購入できない安い商品やレアな商品を探すためにこそ、ネット通販を利用する人も多いものです。たしかに、ネットショップには掘り出し物が出品されていることもあります。
しかし、先ほどもご説明したように、極端に安い商品や入手困難な商品が出品されている場合は、詐欺である可能性も十分にあります。
気になる商品を見つけたときは、詐欺の可能性が高いサイトの特徴を十分に確認すべきです。少しでも怪しいと感じる点があれば検索するなどして調べてみましょう。
キャンセルや返品の条件を事前に確認する
キャンセルや返品の条件についても、事前に確認しておきましょう。
キャンセル・返品不可とされている場合や、そもそも記載がない場合には、詐欺サイトではないかという疑いを持ち、特に念入りに調べてから購入すべきです。
利用規約を必ず確認する
基本的なことですが、初めて利用するサイトで商品を購入する際には、利用規約を確認することも重要です。
利用規約が掲載されていない場合や、掲載されていてもその内容がサイトの内容と適合しない場合は、詐欺サイトである可能性が非常に高いといえます。
ネット通販詐欺に遭ったときに自分で返金を求める方法
ここでは、ネット通販詐欺に遭ってしまったときに、振り込んだ代金を返金してもらうためにとるべき方法をご紹介します。
警察に被害届を提出する
まずは、早急に警察で被害届を提出しましょう。
警察が犯人を直接検挙してくれなかったとしても、被害届を提出しておけば、次にご説明する口座凍結の制度によって救済される可能性が出てきます。
被害届の提出は、最寄りの警察署または各都道府県のサイバー犯罪相談窓口で行います。
銀行やカード会社に連絡する
次に、銀行振り込みで代金を支払った場合はその銀行、カード決済を利用した場合はそのカード会社にも連絡してください。
カード決済の場合は、カード会社から詐欺師へ代金が支払われる前であれば、取引を停止して返金してもらうことが可能です。
銀行に連絡した際は、振込先の口座を凍結してほしい旨と、警察に被害届を提出していることを伝えましょう。そうすれば、振り込め詐欺救済法に基づき詐欺師の口座が凍結され、所定の手続きを経て返金を受けられる可能性があります。
口座に預金が残っていなければ返金が受けられないので、警察への被害届と銀行への連絡は早急に行うことが大切です。
預金保険機構のサイトで公告を確認する
銀行に口座凍結を申し出る前に、他の被害者が既に申し出ていて、口座凍結と資金分配の手続きが進められていることもあります。
そのため、預金保険機構のサイトで公告を確認するようにしましょう。その口座について資金分配の公告が行われている場合は、所定の期間内に支払い申請をすることで、分配に参加することができます。
【参考】: 預金保険機構
返金されるまでの期間
カード決済の取引が停止された場合は、数週間のうちに返金を受けることが可能です。
振り込め詐欺救済法に基づき返金を受ける場合は、口座凍結から返金までに最短で90日がかかります。
詐欺師に対して直接返金を求める場合には、さらに長期間を要する可能性があります。
すぐに返金されるとは限りませんが、泣き寝入りせず確実に返金手続きを行うことをおすすめします。
会員情報の削除・個人情報の変更もしておく
返金を受けるための手続きは以上ですが、今後の詐欺被害を防止するため、サイトに登録した会員情報は削除し、可能であれば電話番号やメールアドレスなどの個人情報も変更しておきましょう。
購入申し込みをした時点で詐欺師に個人情報が伝わっていますので、情報をそのままにしておくと忘れた頃に別の詐欺被害に遭ってしまうおそれがあります。
ネット通販詐欺で弁護士・司法書士に相談するメリット
カード決済の取消しや銀行の口座凍結により無事に返金される場合はよいですが、そうでない場合は詐欺師に対して直接、返金を求めて交渉する必要があります。
詐欺師が素直に返金に応じるとは考えがたいので、その場合には弁護士または司法書士という法律の専門家に相談し、対応を依頼することをおすすめします。
専門家に相談・依頼することで得られるメリットは以下のとおりです。
- 適切な解決方法を提案してもらえる
- サイトや口座の情報などから詐欺師の所在を調査してもらえる
- 必要に応じて警察・銀行・カード会社への対応についてアドバイスしてもらえる
- 詐欺師との交渉によりお金を取り戻してくれる可能性がある
- 裁判等の法的手続きも任せることができる
一人で悩んでいるだけではお金が戻ってくることはありませんので、弁護士・司法書士の力を借りて返金手続きを進めましょう。
まとめ
この記事では、ネット通販詐欺の手口や詐欺サイトの特徴をご紹介しましたが、詐欺の手口は多様化・巧妙化しています。詐欺サイトも、一見しただけでは見分けがつかないものも多くなっているという実情があります。
ネット通販を利用する際には、詐欺師が潜んでいる可能性があるということを念頭に置き、慎重に利用する必要があるでしょう。
万が一、被害に遭った場合にはすぐ弁護士・司法書士に相談し、アドバイスに従って適切に対処することをおすすめします。