- 国際ロマンス詐欺とは、SNS等で知り合った異性から現金を騙し取る犯罪である
- 孤独を強く感じている人は国際ロマンス詐欺に遭いやすい
- 会ったことがない相手に送金してはいけない
- 早急に弁護士・司法書士に相談することでお金を取り戻せる可能性がある
出会い系サイトやマッチングアプリ、SNSなどで外国人(と名乗る人物)と知り合い、恋愛感情を抱いた結果、一度も会わないまま多額の金銭を騙し取られるという国際ロマンス詐欺の被害に遭う人が急増しています。
冷静に考えると「騙される人の方がおかしい」とも思えますが、恋愛関係にあると錯覚させ、相手の正常な判断能力を狂わせることこそが詐欺師の手口です。
国際ロマンス詐欺の被害に遭わないためには、具体的な手口や事例を知っておくことが大切です。
この記事では、国際ロマンス詐欺の手口や事例、被害に遭いやすい人の特徴などをご紹介し、実際に被害に遭った場合に返金してもらう方法も解説します。
ネットで詐欺に遭わないかが不安な方も、既に被害に遭ってしまった方も、参考になさってください。
国際ロマンス詐欺とは?
国際ロマンス詐欺とは、出会い系サイトやマッチングアプリ、SNSなどインターネット上の交流サービスを通じて外国人をかたる人物と知り合い、恋愛関係にあると錯覚させられ、一度も会わないまま多額の金銭を騙し取られるという詐欺のことです。
詐欺師は外国人であるケースもあれば日本人であるケースもありますが、外国人として振る舞うことから「国際ロマンス詐欺」と呼ばれています。
短期間のうちに多額のお金を騙し取るために、ネット上で知り合ってすぐに熱烈な愛情表現をし、ターゲットに「恋愛関係にある」「結婚する予定」と錯覚させることが特徴的です。
このような愛情表現をするためには、日本人よりも外国人を装った方がやりやすく、メッセージを受け取った方も自然なこととして信用してしまいやすいのでしょう。
国際ロマンス詐欺の被害事例は2011年頃には既に確認されていたようですが、国民生活センターでは2020年から被害者からの相談が急増しています。
【出典】: 国民生活センター|ロマンス投資詐欺が増加しています!-その出会い、仕組まれていませんか?-
被害に遭わないよう、国際ロマンス詐欺の手口や事例を詳しくみていきましょう。
国際ロマンス詐欺の代表的な手口
詐欺師がお金を騙し取るために使う口実にはいくつかのバリエーションがありますが、手口はほぼ共通しています。以下で、具体的な手口を解説します。
2人の将来のために投資を持ちかけてくる
国際ロマンス詐欺で詐欺師が語るストーリーで最も多いのは、「2人の将来のためにお金を増やしたい」といって投資話をもちかけてくるものです。
以下のステップを踏んでお金を騙し取られるというのが、代表的な手口です。
- 出会い系サイトやマッチングアプリ等でメッセージを送ってくる
- 短期間のうちに熱烈な愛情表現をし、恋愛感情を抱かせる
- 2人の将来のためという口実で投資を勧められる
- 偽の投資サイトを案内される
- 最初は少額からの投資を勧められ、資金の送金を指示される
- 当初は利益が出るように装われ、信用してしまう
- さらに高額の投資を勧められ、資金の送金を指示される
- 出金しようとしても様々な口実で拒否され、追加の送金を要求される
- 最終的に詐欺師と連絡が取れなくなり、お金を騙し取られたことに気付く
当初はターゲットの恋愛感情を利用して少額の投資資金を出させ、実際に利益が出るように見せかけて信用させ、多額の金銭を送金させるという点が特徴的です。
プレゼント等を送るための通関費用を要求してくる
金銭を送金させる口実として、投資話以外に「プレゼントを送るため」というものもあります。その手口は、以下のようなものです。
- 出会い系サイトやマッチングアプリ等でメッセージを送ってくる
- 短期間のうちに熱烈な愛情表現をし、恋愛感情を抱かせる
- 愛情の証としてプレゼントを送るので受け取ってほしいと伝えられる
- 実際にはプレゼントは届かず、通関費用などの名目で送金を頼まれる
- 実際に送金すると詐欺師と連絡が取れなくなり、お金を騙し取られたことに気付く
通関費用を要求される他にも、宅配業者を名乗る人物から連絡が入り、受取人払いの費用を国際送金するように要求されるパターンもあります。
会いに来るための渡航費を要求してくる
もう一つ、よくある口実として「会いに行きたいが手持ちのお金がないので立て替えてほしい」といって渡航費を要求してくるケースもあります。
やはり、依頼された金額を送金すると詐欺師と連絡が取れなくなり、お金を騙し取られたことに気付くことになります。
実際にあった国際ロマンス詐欺の事例
ここでは、実際にあった国際ロマンス詐欺の事例をいくつかご紹介しますので、参考になさってください。
「2人の将来のため」と勧誘され投資資金を騙し取られた事例
まずは、典型的な投資資金の詐欺の事例をご紹介します。
2人の将来のためと勧誘され投資したが、出金しようとすると保証金を要求された
マッチングアプリで自称外国人経営者、ファッションブランドでVIP待遇を受けているという男性と出会った。男性がアプリを退会し、無料会話アプリでやり取りする中で、「Baby」「妻」と呼ばれるようになった。将来のため、紹介する投資サイトで投資するよう何日か説得され続け、断り切れず投資した。少額を投資したところ利益が出て出金できた。元金が多ければもうけも多いと説得され、銀行や消費者金融から借り入れて、合計約500万円投資した。出金しようとしたところ、利益を含めた総資産の15%(180万円)を保証金としてさらに支払う必要があると言われたため、50万円をさらに借り入れた。残りの130万円についてマッチング相手に相談していたところ、連絡が途絶えた。
【引用元】: 国民生活センター|ロマンス投資詐欺が増加しています!-その出会い、仕組まれていませんか?-
この事例での被害金額は550万円ですが、数千万円の被害に遭っている人も数多くいます。
借金をしてまで投資資金を送金したのに返金を受けられず、自己破産を余儀なくされる人も少なくありません。
「荷物を受け取ってほしい」と言われ通関費用を騙し取られた事例
次に、通関費用の名目で金銭を騙し取られた事例をご紹介します。
相手のパスポートが送られてきたので信用し荷物の受取りを承諾したら、高額手数料を請求されたシリアで活動しているオーストラリア人ジャーナリストと名乗る人物とマッチングアプリで知り合い、数週間通話アプリでやりとりや会話をした。シリアでの仕事の契約が終了し帰国する際に日本に来ることになり、荷物を受け取ってほしいと言われた。荷物の発送はイギリスの医師が行うというので、疑問を持ったが、相手と医師のパスポートが送られてきたので受取りを了承した。ところが、配送途中にトラブルがあり、タイの税関で差し止められたと連絡があったので、手数料として約200万円を振り込んだ。荷物が大金のため、日本に配送してもらうには、さらにペナルティーとして約400万円の支払いが必要であり、数日以内に振り込むよう迫られている。
【引用元】: 国民生活センター|-愛のギフトを受け取ってほしい!?-それってもしかして「国際ロマンス詐欺」?
「荷物を送る」というケースでは、投資詐欺のケースよりは被害金額が小さいことが多いです。しかし、それでも数十万円~数百万円の被害に遭うケースが多くなっています。
「会いに行く」ための費用を要求された事例
日本に会いに行くという口実で費用を請求された事例もご紹介します。
アメリカの軍人であるという男性とSNSで知り合いになった。相手から、日本へ渡航するため国連へ休暇を申請したいが、現在シリアにおり許可書取得費用の支払いが困難であるので、代わりに国連へ850ドルを払ってほしいと依頼があった。国連を名乗る機関から届いたメールの情報を基に海外送金窓口へ向かったところ、銀行から、詐欺が多発しているので面識のない人物へ送金はできないと言われた。そのことを国連を名乗る機関へメールで伝えると、別の送金先を利用するよう指示があった。どうすればよいか。
【引用元】: 国民生活センター|-愛のギフトを受け取ってほしい!?-それってもしかして「国際ロマンス詐欺」?
この事例では、銀行でストップがかかったため水際で被害を防止できたようです。しかし、国際ロマンス詐欺では暗号資産で送金するように要求されることが多いので、自分で注意することが極めて重要となります。
国際ロマンス詐欺が急増している理由
国民生活センターのデータによると、2020年から国際ロマンス詐欺の被害相談が急増しています。
ここでは、近年になって国際ロマンス詐欺が急増した理由を考察します。
コロナ禍で対面での出会いの機会が減った
被害相談が急増した2020年といえば、新型コロナウイルス感染症が拡大し始めた時期と重なります。
人々は感染を恐れ、政府や地方自治体も緊急事態宣言、まん延等防止重点措置などを発出するとともに、各種イベントや宴会、飲食店の利用の自粛などを求めました。
それ以降、対面での出会いの機会が減ったことから、ネットに出会いを求める人が増えたと考えられます。
対面で詐欺師に出会うことはほとんどなくても、ネットには数多くの詐欺師が潜んでいるので、一般の人が詐欺師に接触する機会が増えたといえるでしょう。
孤独を感じる人が増えた
コロナ禍で様々な活動の自粛を要請されたことから、孤独感を感じる人が増えています。
その一方でSNSなどの利用者は増え続けていますが、ネット上でのやりとりだけでは表面的な交流に過ぎないため、内心で強い孤独感に苛まれている人も多いものです。
そんなとき、ネットで知り合った人から熱烈な愛情表現を受けると、気持ちが舞い上がってしまうこともあるでしょう。
SNSやマッチングサイトでの出会いが一般化してきた
以前は出会い系サイトやマッチングアプリに対して「いかがわしい」というイメージを持つ人が多かったですが、最近では一つの出会いの場として一般的に普及してきています。また、SNSでのやりとりを通じて実際に出会う人も増えています。
このようにネットを介した出会いが一般化してきたことから、会ったことがない相手に対する警戒心が薄れてきていると考えられます。
そのため、一度も会ったことのない外国人(詐欺師)を信用してお金を送るということも起こるのでしょう。
国際ロマンス詐欺に遭いやすい人の特徴
次に、国際ロマンス詐欺に遭いやすい人の特徴をご紹介します。以下の特徴に当てはまると思われる方は、くれぐれもご注意ください。
40代以上でお金や時間に余裕がある
国際ロマンス詐欺の被害者で特に多いのは、40代以上でお金や時間に余裕がある人です。このような人が刺激を求めて出会い系サイトやマッチングアプリを利用すると、詐欺にかかりやすいといえます。
詐欺師としても相手に多額のお金を出させることが目的ですから、お金と時間に余裕を持っていそうな人を中心にターゲットを絞ることでしょう。
もっとも、20代や30代でも国際ロマンス詐欺の被害に遭っている人は少なくありません。また、被害者の中には男性も女性もいます。基本的には、ネットで他人と交流するすべての人が詐欺に注意すべきです。
ネットでの出会いに期待している
出会いを求めてネットを利用する場合でも、その熱量は人それぞれであり、大きな温度差があります。やはり、ネットでの出会いに期待を膨らませ、チャンスを逃したくないと考えている人ほど詐欺師に騙されやすい傾向にあります。
もっとも、詐欺師は熱烈な愛情表現でターゲットを口説き落とし、お金を出させるという手口を使ってきます。「自分は大丈夫」と考え油断していると、罠にかかってしまう危険性もあります。
SNSやネットにそれほど詳しくない
SNSやネットの経験が豊富な人であれば、詐欺師のメッセージを見た時点で違和感を感じることも多いものです。しかし、ネットに疎い人は詐欺師のメッセージを信じてしまい、被害に遭うことがあります。
中高年で被害に遭った人の中には、SNSの初心者や、今までに出会い系サイトやマッチングアプリなどを使ったことがないという人も多いものです。
国際ロマンス詐欺に遭わないための注意点
ネットで出会った相手から熱烈な愛情表現を受けたとしても、以下の点に注意すれば、国際ロマンス詐欺の被害を回避することが可能となります。
相手の写真やアドレスをネットで検索する
一般的に詐欺師は、外国人の美男・美女の顔写真をプロフィールに掲載しているものです。
しかし、その写真は偽物であり、ネットで拾った他人の写真です。ターゲットに恋愛感情を抱かせるために、美男・美女の顔写真を無断で転載しているのです。ネットの画像検索で調べれば、まったく別人の顔写真であることが判明することもあります。
また、相手のアドレスなどの情報をネットで検索すれば、「詐欺師」であることが判明することもあります。
まずは、可能な限り相手の情報を検索して正体を探りましょう。
会ったことがない相手に送金をしない
ネットで他人と交流する場合には、「会ったことがない相手に送金はしない」と決めておいた方がよいでしょう。
冷静に考えれば、まだ会ってもいない相手から多額のお金を要求されることが、いかに怪しいことであるかがわかるはずです。
会う前の段階でお金の話を持ち出されたら、詐欺を疑った方がよいでしょう。
送金する前に第三者に相談する
とはいえ、詐欺師の術中にはまってしまうと、心を奪われているため正常な判断が難しくなっています。
そこで、多額のお金を送金する前には家族や友人などで構いませんので、第三者に相談することをおすすめします。
「その話は怪しい」「詐欺ではないか」といった冷静なアドバイスを受けることで、詐欺に気付くことができるでしょう。
国際ロマンス詐欺に遭ってしまったときに返金してもらう方法
国際ロマンス詐欺に遭ってしまったときは、どうすれば返金してもらうことができるのでしょうか。まずは、自分でできる対処法をご紹介します。
相手との連絡を絶ち、証拠を確保する
一般の方が詐欺師に対して直接、返金を求めることはおすすめできません。様々な口実で「あと○○万円、送金してもらえれば返金できる」とさらに多額の送金を求められ、被害が拡大するケースが非常に多いからです。
詐欺に気付いたときは、相手との連絡を絶つことが最善の対処法となります。
そして、詐欺師に逃げられる前に証拠を確保することも重要です。相手とのやりとりを表示した画面を撮影したり、スクリーンショットで保存するなどしておきましょう。
警視庁のサイバー犯罪相談窓口に相談
詐欺師がどこの誰かを突き止めるためには、警察に被害届を提出することが有効です。
最寄りの警察署ではなく、お住まいの都道府県の警察本部に設置されている「サイバー犯罪相談窓口」に相談するのがおすすめです。
「#9110」(警察相談専用電話)にかけると、様々な相談に乗ってもらえますし、必要に応じて最寄りの「サイバー犯罪相談窓口」を案内してもらえます。
ただし、警察の捜査によって犯人が突き止められたとしても、警察がお金を取り戻してくれるわけではありません。
国民生活センターに相談する
犯人に対して返金を求めるには、国民生活センターに相談するのがおすすめです。国民生活センターには数多くの被害事例が寄せられているので、相談員が豊富な知識と経験に基づいて解決策をアドバイスしてくれる可能性があります。
相談を希望する場合は、局番なしの「188」に電話すると、最寄りの消費生活センター等を案内してもらえます。
銀行に連絡する
銀行から詐欺師に送金した場合は、その銀行に連絡して被害の報告をすることをおすすめします。振り込め詐欺救済法に基づく口座凍結の制度によって、返金を受けられる可能性があります。
ただし、暗号資産で送金してしまった場合は、この方法で返金を受けることはできません。
国際ロマンス詐欺で被害を受けたら弁護士・司法書士に相談を
実際のところ、国際ロマンス詐欺の被害に遭ってしまうと、自分で返金を求めることは極めて難しいのが実情です。そこで、弁護士または司法書士という法律の専門家に相談することをおすすめします。
返金方法をアドバイスしてもらえる
返金を求めるためには前述したように、詐欺師との連絡を絶つ、証拠を確保するといった事前準備をした上で、適切な手続きを行う必要があります。
しかし、どうすればよいのかがわからずにいると、詐欺師からさらに多額の送金を要求されたり、逃げられたりする可能性が非常に高いです。
早期に専門家に相談すれば、返金を受けるためにやるべきことを具体的にアドバイスしてもらうことができます。
相手の口座等の情報を調査してもらえる
詐欺師に対して返金を請求するためには、相手の氏名や連絡先を突き止める必要があります。
警察に被害届を提出しても動いてもらえないことも多いですが、弁護士・司法書士に依頼すれば、相手の口座等の情報から可能な限りの調査を行ってもらえます。
個人が調査を行うことは非常に困難ですので、専門家を頼りましょう。
法的手続きで返金を請求してもらえる
相手の氏名や連絡先が判明すれば、交渉や裁判によって返金を受けられる可能性があります。
弁護士・司法書士に依頼すれば、相手との交渉や裁判もすべて任せることができます。
自分で詐欺師と交渉しても無視されるでしょうし、裁判手続きは非常に複雑です。これらの手続きを専門家に任せることで、返金を受けられる可能性が高くなります。
まとめ
国際ロマンス詐欺の犯人から返金を受けるためには、弁護士・司法書士への相談が最も有効です。
ただし、犯人が海外にいて、暗号資産で送金してしまったような場合には、返金を受けることは難しいこともあるのが実情です。
したがって、国際ロマンス詐欺の実態を知って被害を防止することと、被害に遭ってもなるべく被害が軽い段階で気付くことが最も重要であるといえます。
出会い系サイトやマッチングアプリ、SNSなどを利用する際は、本記事を参考にして国際ロマンス詐欺を警戒するとともに、万が一、被害に遭ったときは早期に弁護士・司法書士に相談することをおすすめします。