- 簡単に稼げる副業への勧誘は詐欺の可能性が高い
- 副業詐欺に遭うと稼ぐどころかお金を失ってしまう
- 副業詐欺の特徴を知れば詐欺を見分けることが可能である
- 返金してもらうためには弁護士・司法書士への相談が有効である
2018年から政府が副業解禁を推し進めていることもあり、昨今は副業に興味を持つ人が増えています。
それだけでなく、新型コロナウイルスの影響で収入が減ったり、増税や物価の上昇によって生活が苦しくなっていたり、老後の生活費に心配があったりして、副業を始める必要性を感じている人も多いことでしょう。
しかし、ネットで見かけた儲け話などに安易に手を出すと、副業詐欺に遭うおそれがあります。
お金を稼ぐために副業を探しているのに、多額のお金を騙し取られたのでは元も子もありません。そこで今回は、副業詐欺の手口や特徴、詐欺を見分ける方法をわかりやすく解説していきます。
被害金の返金を請求する方法もご紹介しますので、既に副業詐欺の被害に遭ってしまった方も参考になさってください。
副業詐欺とは?
副業詐欺とは、割の良い副業を紹介することを装い、様々な名目で金銭を騙し取るという手口の詐欺のことです。
「簡単に稼げる」「確実に稼げる」などの宣伝文句で勧誘し、手数料や会員登録料などと称して多額のお金を要求する手口が典型的です。この手口のことを「利益誘因型サイト」といいます。
国民生活センターには、利益誘因型サイトに関する相談だけでも毎年3,000件以上の相談が寄せられています。
【出典】:国民生活センター|怪しい副業・アルバイトのトラブル
その他にも、副業詐欺には様々なバリエーションがあります。詳しくは次項で解説しますが、例えば悪質な情報商材を売りつけられた事例についても、国民生活センターに数多くの相談が寄せられています。
【出典】:国民生活センター|簡単に高額収入を得られるという副業や投資の儲け話に注意!-インターネット等で取引される情報商材のトラブルが急増-
今後も副業に興味を持つ人は増えていくと思われ、それに伴い副業詐欺の被害に遭う人の数も増えていくおそれがあります。副業を探す際には、十分に注意することが必要となります。
副業詐欺のよくある手口
副業詐欺の手口は、副業でお金を稼ぎたいという人の心理を悪用し、「稼ぐためにはまず料金を支払うことが必要」と信じ込ませて金銭を騙し取るというものです。
具体的な手口として、主に以下のようなものが挙げられます。
高額の会費やサポート料を要求される
前項でもご紹介した「利益誘因型」の手口です。
副業を紹介すると言っておきながら、以下のような名目で多額の金銭を要求してきます。
- 仕事を紹介するには手数料が必要
- まずは有料の専用サイトに登録してもらう必要がある
- スムーズに稼ぐためには有料のサポートが必要
被害者が要求に応じて多額の金銭を支払っても、実際には簡単に稼げるような仕事は紹介されません。
報酬が支払われない
実際に仕事を依頼され指示どおりに成果物を納品しても、報酬が支払われず発注者と連絡が取れなくなってしまうという手口です。
仕事の募集から受発注、納品までがインターネット上で完結するクラウドソーシングなどで発生するケースが多くなっています。
スマホ副業を持ちかけてくる
近年はスマホでインターネットにアクセスする人が多いことから、スマホで簡単な作業をするだけでお金を稼げるという「スマホ副業」を持ちかけてくる詐欺の事例が急増しています。
- Twitterでリツイートするだけで◯万円当選のチャンス!
- 人気のLINEスタンプを無料でプレゼントします!
- Instagramで画像を選ぶだけで高額収入!
このような宣伝文句で勧誘し、高額の手数料を要求したり、有料の専用サイトへの登録を求めてきたりします。
情報商材やツールを売りつけられる
お金を稼ぐためのノウハウをまとめた情報商材や、インターネットを使った副業を効率よく行えるようになるツールを、高額で売りつけられるという手口の詐欺もあります。
情報商材やツールのすべてが詐欺というわけではありませんが、詐欺師が提供する情報商材やツールは説明と異なるものであったり、指示どおりに実行しても儲からない内容であったりします。
それでいて、代金は優良な商品の相場よりも高くなっていることがほとんどです。
架空の投資話を持ちかけられる
最近は副業として投資を始める人も多いため、副業を探していて投資詐欺に遭ってしまう人も増えています。
投資詐欺の手口として多いのは、「プロが代わりに運用する」とかたって最初は少額の資金を預かり、利益が出ているように見せかけて被害者を信用させ、次に多額の資金を預かって連絡を絶つというものです。
多くの場合、実際には運用などしておらず、架空の投資話でお金だけを騙し取られることになります。
ネットショップ制作代行業をかたる詐欺
インターネットを使った副業として人気が高いものに「ネットショップの運営」があります。
しかし、ネットショップの運営で利益を出すためには、クオリティの高い通販サイトと商品を用意しなければなりません。
そこで詐欺師は、通販サイトの制作代行や売れやすい商品の提供を持ちかけ、多額の費用を要求してきます。サイトを運営するためのツールやマニュアルの代金を要求されることもあります。
でき上がったサイトや提供される商品は事前に説明されたものとは異なり、利益が出るようなものではないことがほとんどです。
マルチ商法に引きこまれる
「誰でも高収入」という謳い文句で、マルチ商法やネズミ講に勧誘されることもあります。
これらの商法で高収入を得ている人がいるのも事実ですが、末端の会員が大きな利益を得ることはできない仕組みになっています。
参加してしまうと、既存の会員を儲けさせることになるだけです。
チャットレディやメールレディの副業をかたる詐欺
チャットレディやメールレディそのものはまっとうな副業ですが、詐欺師が「高所得の異性と会話するだけで高収入」といった謳い文句で勧誘してくることがあります。
しかし、その仕事を始めるために高額の登録料を要求されることが多いです。仕事を始めても、報酬を受け取るための手数料と称して多額の金銭の支払いを要求されてしまいます。
ほとんどの場合、チャットやメールでやりとりする相手は詐欺師が仕込んだサクラであり、被害者は稼ぐことができないままお金を騙し取られてしまいます。
実際にあった副業詐欺の事例
ここでは、実際にあった副業詐欺の事例をいくつかご紹介します。具体的な手口を見ることで、詐欺の手口に関する理解を深めていただければと思います。
「スマホをタップするだけ」という謳い文句で多額の金銭を騙し取られた事例
消費者庁は平成30年10月、「スマホをタップするだけでお金が稼げる」などと謳い、多額の金銭を支払わせていた事業者の名称を公表し、国民に対して注意喚起を呼びかけました。
この事業者が用いていた手口は、まずSNS等に「スマホをタップするだけでお金が稼げる」、「無料モニター募集」などといった広告を掲載します。
そのビジネスの申し込み希望者にはまず初期費用として1万8,000円を支払わせ、さらに、高い収益を得るためには別途有料コースに入る必要があると電話で執ように勧誘し、高額な料金(7万~120万円)を支払わせていました。
簡単に稼げるという事前の説明は虚偽であり、実際のビジネスの内容は、支払った金額以上の収益を上げることは難しいものでした。
【出典】:消費者庁|「スマホをタップするだけでお金が稼げる」などとうたい、多額の金銭を支払わせる事業者に関する注意喚起
このように、初期費用や高額のサポート料を要求されるビジネスは、詐欺である可能性が高いといえます。
お金を稼ぐための副業なのに、稼ぐ前にお金を要求された時点で怪しいと気付くべきでしょう。
副業のマニュアルを売りつけられた事例
こちらも消費者庁が令和4年4月13日に注意喚起を呼びかけた事例ですが、「誰でも簡単な作業をするだけで1日数万円が稼げる」などの謳い文句で悪質なマニュアルを売りつけていたという手口のものです。
具体的には、まずネット上の広告やLINEでのメッセージで副業に勧誘されます。誘い文句は「1日数分、簡単な作業をするだけで誰でも1日当たり数万円が稼げる」などといったものですが、具体的な作業内容は伏せられていました。
興味を持ってアクセスしてきた人に対して、その副業をするためにはマニュアルの購入が必要であるとし、その代金として2万円前後の金銭を要求していました。
マニュアルは実際に提供されましたが、そこに記載されている副業は、誰でも簡単に稼げるようなものではありませんでした。
【出典】:消費者庁|簡単な作業をするだけで「誰でも1日当たり数万円を稼ぐことができる」などの勧誘により「副業」の「マニュアル」を消費者に購入させた事業者に関する注意喚起
マニュアル(情報商材)というのは、副業を効率よく行うノウハウを学ぶためのものに過ぎません。マニュアルがなければ副業ができないという性質のものではないことを知っておくべきでしょう。
副業サイトで多額のポイントを購入させられた事例
次は新聞記事で紹介された事例ですが、副業サイトに登録したところ、多額のポイントを購入させられ、騙し取られたというものです。
被害者は、資産家とメールのやりとりをするだけで報酬がもらえるという説明を受け、その副業サイトに登録しました。
何度か資産家と名乗る人物とやりとりをしたものの、運営者から「ポイントを購入して有料会員になれば多額の報酬がもらえる」「報酬を受け取るにはポイントが必要」などと、ことあるごとに有料ポイントの購入を要求されました。
被害者は指示に従ってポイント購入を繰り返し、わずか数日で約30万円を騙し取られ、貯金は底をついたといいます。
【出典】:琉球新報|「人生、終わった」副業サイトに登録した女性 ポイント購入を繰り返し数日で30万被害…電子マネー詐欺の実態
この事例でもやはり、報酬を受け取る前に多額のポイント購入を要求された時点で、怪しいと気付くべきであったといえるでしょう。
副業詐欺の特徴は?詐欺を見分ける方法
副業詐欺には、顕著な特徴がいくつかあります。前項でご紹介した実例の中にも様々な特徴が出てきましたが、ここでまとめてご紹介します。
副業詐欺の特徴を把握しておくことで、被害に遭う前に詐欺を見分けることが可能となるでしょう。
誰でも・必ず・簡単に稼げると謳う
詐欺師は、多くの人の関心を惹くために広告で過剰な表現を用います。
冷静に考えれば、誰でも、必ず、簡単に高収入が得られるような仕事は存在しないということがわかるはずです。
そもそも、こういった過剰な表現で消費者を勧誘することは法律で禁止されています(景表法)。このような広告や勧誘活動をしている時点で、違法業者であるといえます。
うまい話には裏があるものです。過剰な広告を見たら詐欺を疑うべきでしょう。
稼ぐ前に費用を要求してくる
仕事を始める前に手数料の支払いや、情報商材、ツールなどの購入を要求してくる業者のほとんどは詐欺師です。
まっとうな副業の中にも何らかの初期費用がかかるものはありますが、自分で店舗を構えるような仕事でない限り、それほど高額の費用を要することはありません。
「仕事をするために○○が必要」といって高額の費用を要求された場合は、詐欺を疑うようにしましょう。
仕事内容が具体的でないか、不審な点がある
情報商材を売りつける詐欺や、高額のサポートを契約させる詐欺に多い特徴ですが、勧誘の段階では具体的な仕事内容が明かされないことがあります。
具体的なノウハウは情報商材やサポートの中で教えられるものなので、このような手法をとる業者の全て詐欺というわけではありません。
しかし、内容が分からないものに手を出すのはやはり危険です。不審に思ったら、契約する前にその副業のことを自分でよく調べてみた方がよいでしょう。
会社情報の掲載内容があいまい
ネット上に広告を出しているにもかかわらず、ホームページなどに会社情報を明確に掲載していない業者は、詐欺業者であると判断してほぼ間違いありません。
情報商材やツール、コンサルティングなどを提供する事業者であれば、ホームページなどに「特定商取引法に基づく表記」を掲載しなければなりません。
会社の名称・住所・電話番号など所定の事項が明確に掲載されていなければ、法律に違反していることになります。
インターネットで検索してもその業者の明確な情報が判明しない場合は、詐欺を疑った方がよいでしょう。
副業詐欺に遭わないための注意点
インターネットで副業を探していると、高い確率で詐欺師に遭遇する可能性がありますが、以下の点に注意すれば未然に被害を防ぐことが可能となります。
簡単に大きな利益が出る副業はないと心得る
大前提として、誰でも簡単に大きな利益が得られる副業はないことを肝に銘じておきましょう。
当然のことですが、高収入を得るためには多大な労力または一定の資格や才能などが要求されます。誰でも確実に収入が得られる副業なら、利益はわずかなものとなります。
ネット上の広告などを見ていると、裏技のような副業があるような気がするかもしれませんが、うまい話には裏があるということを忘れてはいけません。
初期費用がかかる副業を選ばない
まっとうな副業なら、手数料が必要だとしても、成果が得られた場合にそこから差し引かれる形となっていることが多いです。
情報商材やツールが必要だとしても、さほど高額なものを売りつけられることはありません。
副業には数多くの種類がありますので、高額の初期費用がかかるものは選ばないと決めておいた方がよいでしょう。
運営会社の評判を確認する
広告を見たり勧誘を受けたりして、その副業をやってみたいと思ったら、運営会社の基本情報とともにネット上の評判も検索して調べてみましょう。
業者の名称で検索するだけで、詐欺業者であることがわかることもあります。明確に詐欺だと判明しない場合でも、評判が悪い場合には手を出さない方が無難です。
送られてきた情報をうのみにせず自分で調べる
気になる副業があったら、業者の情報だけでなく、その副業に関する情報も自分で検索して調べてみましょう。
- その副業そのものが違法
- 合法な副業だが、詐欺業者が提供していることがある
- まっとうな副業だが、簡単に稼げるわけではない
といったことがわかってくるはずです。納得できた場合にのみ、その副業をするべきです。
詐欺業者は、「自分たちのいうとおりにすれば、誰でもすぐに、簡単に稼げる」などとあおってくるものですが、いったん立ち止まって自分で調べることは非常に重要です。
副業詐欺に遭ったときに返金を請求する方法
副業詐欺の被害に遭ってしまった場合でも、以下の方法で被害金の返金が受けられる可能性があります。
警察に相談する
副業詐欺は犯罪ですので、警察に相談しましょう。「#9110」に電話すると、適切な係に案内してもらえます。
警察がすぐに動いてくれるとは限りませんが、犯人を検挙してもらえた場合は、示談交渉によって返金してもらえる可能性があります。
ただし、警察がお金を取り返してくれるわけではないので、示談交渉は自分で行う必要があります。
国民生活センター等に相談する
各地の国民生活センターや消費生活センターでは、副業詐欺に関する相談を無料で受け付けています。専門の相談員が詳しい話を聞いた上で、とりあえずの対処法などをアドバイスしてくれます。
どこに行けばよいのかがわからない場合は、「188」に電話をすると最寄りの相談窓口を案内してもらえます。
銀行やクレジットカード会社に相談する
銀行振込で詐欺師にお金を支払った場合は、すぐにその銀行に相談しましょう。振り込め詐欺救済法に基づく口座凍結の制度によって、返金が受けられる可能性があります。
情報商材やツールの購入などでクレジットカード決済を利用した場合は、すぐにそのカード会社に相談しましょう。詐欺師にお金が支払われる前であれば、取引を停止して返金してもらうことが可能です。
商品を購入した場合はクーリングオフをする
情報商材やツール、その他の商品を購入した場合は、8日以内であればクーリングオフをすることで返金を受けられる可能性があります。
ただし、クーリングオフが使えるのは、電話勧誘販売や訪問販売で商品を購入した場合に限られます。
悩んでいると8日が経過してクーリングオフができなくなりますので、被害に気付いたらすぐに国民生活センターまたは弁護士・司法書士といった法律の専門家にご相談ください。
副業詐欺に遭ったと思ったら弁護士・司法書士に相談を
詐欺師から返金を受けるための最も有効な方法は、弁護士または司法書士に依頼することです。
法律の専門家は、詐欺師と直接、返金交渉をしてくれます。交渉で解決できない場合には、裁判や差押えなどの法的手続きも任せることができます。
自分で詐欺師からお金を取り返すことは困難ですが、専門家の力を借りることでその可能性が高まります。
副業詐欺に遭ったと思ったら一人で悩まず、まずは弁護士・司法書士に相談してみることをおすすめします。
まとめ
副業詐欺の手口は巧妙ですが、一定の特徴がありますので、警戒していれば比較的簡単に詐欺を見分けることができます。
とはいえ、「すぐにでも副業をして収入を得たい」「できるだけ楽をして稼ぎたい」と考えていると、詐欺に引っかかってしまうこともあります。
副業詐欺に遭ったときは、早急に対処することが重要です。悩んでいると詐欺師に逃げられてしまい、返金を受けられなくなってしまうおそれがあります。
困ったときは、お早めに弁護士または司法書士にご相談ください。