- 出会い系詐欺の被害で警察に相談しても犯人が逮捕されるとは限らない
- 犯人の特定や口座からの返金を受けるためには警察への相談が必要となる
- 犯人が逮捕されても警察は返金請求をしてくれない
- 出会い系詐欺の被害で返金請求するには弁護士・司法書士に相談すべきである
新型コロナウイルス感染症が拡大し始めた2020年頃から、出会い系サイトを利用して出会った相手からお金を騙し取られる被害に遭う方が急増しています。
出会い系で真面目にパートナーを探していたにもかかわらず、騙されてお金を失ったとなれば、「犯人を逮捕して処罰してほしい」「お金を返してほしい」と考えるのも当然のことです。
犯人を逮捕してもらうためには警察に相談する必要がありますが、それだけでは多くの場合、お金が戻ってくることはありません。
この記事では、出会い系詐欺の被害に遭ったときに警察に相談すれば何をしてもらえるのか、警察に相談しても解決できない場合にはどうすればよいのか、についてわかりやすく解説します。
出会い系詐欺とは
出会い系詐欺とは、異性と出会うためのツールである出会い系サイトを悪用してお金を騙し取る詐欺行為の総称です。
出会い系サイトには、真面目にパートナーを探したい、遊び相手を探したい、など目的はさまざまですが、異性との出会いを求めるユーザーが数多く登録しています。
詐欺師は、そんなユーザーの気持ちを逆手にとってお金を支払わせようとしてきます。
- お金を支払えば魅力的な異性と交際できる
- お金を支払わなければ、この人とはもう会えない
実際に交際する意思がないにもかかわらず、狡猾な手段で相手をこのような気持ちにさせて、お金を騙し取ろうとするのです。
出会い系詐欺の主な手口
出会い系詐欺の手口にはさまざまなバリエーションがありますが、主なものを挙げると以下のとおりです。
- 投資等に勧誘して資金を騙し取る
- 援助や立て替えの名目でお金を無心する
- 会う気がないにもかかわらずやりとりをして有料ポイントを消費させる(サクラ)
- 別の有料サイトに誘導して料金を支払わせる
出会い系詐欺はサクラを利用して有料ポイントを消費させる手口が主流ですが、最近では投資等に勧誘して資金を騙し取るという手口が急増しています。
それに伴い高額の被害に遭うケースも多くなっているので、犯人の逮捕や返金請求などを求める必要性が高まっているといえます。
出会い系詐欺で成立する犯罪
人を騙してお金を奪う行為は、刑法上の詐欺罪に該当します。詐欺罪の犯人には「10年以下の懲役」という刑罰が科せられます。
出会い系サイトで知り合った相手に騙され、お金を支払ってしまった場合は詐欺罪という犯罪が成立していますので、警察に相談して対応してもらうことが可能です。
出会い系詐欺の被害で警察がしてくれること
出会い系詐欺の被害に遭ったときに警察に相談すれば、以下のことが期待できます。
- 事件の捜査をしてもらえる
- 犯人を逮捕してもらえる
- 事件と犯人を検察官に送致してもらえる
警察の権限はここまでです。犯人が刑事裁判にかけられるかどうかは検察官の判断となり、刑事裁判でどのような刑罰が科せられるかは裁判所の判断となります。
要は、「犯人を逮捕してほしい」という場合には警察への相談が必須ということです。
法律上、警察は犯罪が発生したと思われるときには捜査をすることと定められていますが、出会い系詐欺の事件が発生しても、被害者が相談しなければ警察は事件の発生を知ることができません。そのため、警察に相談することは極めて大切なことです。
出会い系詐欺の被害で警察はしてくれないこと
警察に相談したとしても、必ずしも事件の捜査や犯人の逮捕をしてもらえるわけではありません。
出会い系詐欺のようなインターネットを介した犯罪では犯人の足がつきにくいことが多く、捜査をしても逮捕に至らないこともあります。
それに、殺人や放火、強盗などの重大犯罪の場合は別として、犯人検挙の可能性が低い事件については本格的に捜査してもらえないことも多々あるのが実情です。
また、犯人を逮捕してもらえたとしても、被害金の返還請求は民事の問題となります。警察は民事事件には介入しませんので、被害金の返還のために動いてくれることはありません。
出会い系詐欺の被害で警察に相談するメリット
出会い系詐欺の被害に遭ったときに警察に相談することで得られるメリットをまとめると、以下のようになります。
無料で相談できる
警察への相談に費用はかかりません。
被害の実体を公的機関である警察に知らせるという意味でも、「詐欺の被害に遭ったらまずは警察に通報・相談する」「被害届を出す」という姿勢は正しいものといえます。
犯人が逮捕される可能性がある
警察に相談しても犯人が逮捕されるとは限らないとはいえ、相談しなければ逮捕してもらえることはありません。
「犯人を逮捕してほしい」「処罰してほしい」という場合は、必ず警察に相談すべきです。
犯人の住所・氏名が判明することがある
犯人が逮捕されることで得られる大きなメリットは、犯人の住所・氏名が判明することです。場合によっては逮捕に至らなくても、警察の捜査によって犯人の住所・氏名が判明することがあります。
民事事件の手続きで被害金の返還を請求するためには、犯人の住所・氏名を突き止めることが必要不可欠です。警察への相談によってこの目的が果たされた場合には、非常に大きなメリットが得られることになります。
口座凍結制度の利用が可能となる
被害金の返還を求める方法としてはもう一つ、「口座凍結制度」というものがあります。
この制度は振り込め詐欺救済法という法律に定められているもので、口座が犯罪などに不正利用されたことが認められた場合には金融機関が凍結し、その口座に残っている預金が被害者に返還されるというものです。
犯人の住所・氏名が判明していなくても、この制度を利用することによって被害金を取り戻せる可能性があります。
ただ、口座凍結制度を利用するためには、先に警察に被害届を提出していなければなりません。この制度で被害金を取り戻すためにも、早急に警察に相談することが重要であるといえます。
出会い系詐欺の被害で警察に相談する方法
次に、出会い系詐欺の被害に遭ったときに警察に相談するにはどのようにすればよいのかをご説明します。
警察への相談をより有効なものとする方法をご紹介しますので、しっかりとご確認ください。
できる限り証拠を確保する
警察に相談するために証拠が必要というわけではありませんが、有力な証拠があった方が警察に動いてもらいやすくなります。
警察には日々、数多くの被害届が寄せられているため、単に「出会い系詐欺の被害に遭いました」ということを届け出るだけでは、残念ながら警察に動いてもらえる可能性は高くないのが実情です。
そのため、犯罪の被害に遭ったことが確実にわかり、犯人検挙の足がかりとなるような証拠を警察に提供する方が有利となります。できる限り、相談前に以下のような証拠を集めるようにしましょう。
- 犯人とのやりとりをスクリーンショットなどで保存したデータ
- 犯人のLINEのIDや電話番号、メールアドレスなど
- お金を支払った際の送金履歴
「#9110」へ電話する
出会い系詐欺のようなインターネットを介した犯罪の被害に遭ったときには、警察の「サイバー犯罪相談窓口」に相談します。
この窓口は各都道府県に設置されているので、最寄りの警察署に相談することでも案内してもらえますが、「#9110」へ電話すれば最寄りの窓口につながりますので、速やかに相談できます。
被害届を提出する
警察に相談したら、それだけ終わらせるのではなく「被害届」を提出しましょう。
被害届とは、犯罪の被害に遭った人が、その事実を捜査機関に申告するために提出する書面のことです。
書式は警察署にありますので、必要事項を記入して提出します。事実をできる限り具体的かつ詳細に記載することと、証拠と一緒に提出することがポイントとなります。
動いてもらえないときは告訴状を提出する
被害届を提出しても、警察に動いてもらえないことは多々あります。そんなときには「告訴状」を提出するのが有効です。
告訴状とは、犯罪の被害に遭った人が捜査機関に対して被害事実を申告することに加えて、加害者の処罰を求めるために提出する書面のことです。
告訴状が受理されると、警察はその事件に関する書類や証拠物を検察官に送付しなければならないこととされているので、確実に捜査を開始してもらえます。そのため、犯人が検挙される可能性も高まります。
ただし、告訴状の受理には警察もより慎重になるため、「きちんと告訴状を作成したのに受理してもらえない」というケースが少なくありません。
警察への相談で解決できないときは弁護士・司法書士に相談を
警察に相談しても出会い系詐欺の被害問題を解決できないときには、弁護士または司法書士という法律の専門家によるサポートを受けることが有効です。
弁護士・司法書士に相談・依頼することで、以下のメリットが得られます。
被害者の味方として相談に乗ってもらえる
警察は犯罪を捜査して犯人を検挙してくれる機関ですが、被害者の味方として動いてくれるわけではありません。
「公益の代表者」ではあっても、個別の被害者の味方ではないのです。そのため、犯罪が発生したことを知ってもすぐには動いてくれないといったデメリットも生じてきます。
それに対して、弁護士・司法書士は被害者の味方として相談に乗ってくれます。法的観点から最適な解決方法を提案してもらえますし、事件の解決を依頼すれば直ちに動いてもらえます。
犯人へ返金請求をしてくれる
出会い系詐欺の被害で弁護士・司法書士に相談することの最大のメリットは、犯人からの返金を得るために動いてくれることです。この点が、警察への相談とは大きく異なるところです。
弁護士・司法書士に依頼すれば、法的手続き(弁護士法第23条照会)を活用して犯人の携帯番号、LINE IDなどから住所・氏名を割り出すことも可能です。
犯人の住所・氏名が判明すれば、民事裁判によって返金を請求することも可能となります。犯人の逮捕・処罰よりも返金を求めたい場合には、弁護士・司法書士への相談が非常に重要となります。
(報告の請求)
第二十三条の二 弁護士は、受任している事件について、所属弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる。申出があつた場合において、当該弁護士会は、その申出が適当でないと認めるときは、これを拒絶することができる。
2 弁護士会は、前項の規定による申出に基き、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。【引用】:報告の請求|弁護士法第二十三条の二
刑事告訴の手続きもサポートしてくれる
警察は適切な被害届・告訴状の提出があれば受理しなければならない義務を負っていますが、一般私人から被害届・告訴状の提出を受けた場合には、内容が「適切」でないなどと言って積極的に受理しようとしないことも多いです。
弁護士・司法書士に依頼すれば、有効な被害届・告訴状を作成してくれますし、提出の手続きもサポートしてくれます。
警察も法律の専門家からの被害届や告訴をむげに拒否することはできないため、基本的に受理されます。それによって、刑事事件としての進展も期待できます。
出会い系詐欺の被害に遭ったら警察と弁護士・司法書士の両方に相談が有効
出会い系詐欺の被害に遭ったときは、「警察に相談すべきか」それとも「弁護士・司法書士に相談すべきか」という二者択一ではなく、両方に相談するのが最も有効な対処法です。
例えば、弁護士・司法書士の力によって犯人の住所・氏名を突き止めることも可能ですが、そのために必要な法的手続きには時間を要するというデメリットは避けられません。
その点、警察の捜査によって犯人の住所・氏名が判明した場合には、速やかに返金請求が可能となります。
場合によっては、刑事事件における犯人との示談交渉を弁護士・司法書士に任せることで、被害金の返還だけでなく慰謝料も獲得できることもあります。
警察と弁護士・司法書士、両方の力を借りることで、より望ましい解決が期待できるでしょう。
まとめ
出会い系詐欺の被害に遭ったときの相談先について、簡単にまとめると以下のことがいえます。
- 犯人の逮捕、処罰を求めるときは警察に相談
- 返金を求めるときは弁護士・司法書士に相談
ただ、二者択一ではなく両方に相談することで、より高い効果が期待できます。
どちらに先に相談しても構いませんが、迷ったときはまず弁護士・司法書士にご相談ください。必要に応じて、警察への相談についてもサポートしてもらえます。
出会い系詐欺の被害を回復するためには、早期の対処が肝心です。既に警察に相談した方も、これから相談する予定の方も、早めに弁護士・司法書士に相談されることをオススメします。